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さるたに秘密ブック

2009-09-01とある酒場にて

「ネタ要員だぁ? 冗談じゃねぇぜ、ホントに」

「そうそう。セプター連中は俺が召喚されただけで笑い出しやがるしよ」

「…まあ落ち着きなさいよ」

 

「そりゃあさ、生贄払って召喚したのに即死失敗したら腹が立つかも知れねぇけどよ、

 俺だって命がけなんだぜ? いつもグースかスカラベ使わせろたぁ言わねぇが――」

「だよなぁ。俺らが気合入れたところで所詮確率は半々なんだし、当たるも八卦つーか…」

「あン? お前は生きて帰れる見込みがあるだけマシだろうが!

 俺ァいつも体を張って一撃に賭けてんだよ!! テメェとは覚悟が違うんだよ!!」

「まぁまぁ落ち着いて。アナタさんの覚悟は立派だと思いますよ。

 けどねェ、セプターさんの助けがなけりゃ相手に当てさせてもらえないってのも、

 これはこれで辛ェもんがあるんですぜ。

 特にアタシの場合は他の人たちに足場を固めてもらえなきゃ、

 そもそも舞台に上がらせてももらえないってんですからねェ…」

 

「…貴方たちはまだいいですよ」

「あン?」

「…貴方たちの得意技が決まれば、どんな拠点もたちまち陥落。格好いいじゃないですか」

「おい、兄ちゃん。えらく簡単に言ってくれんじゃねえか。俺たちがいつもどんな苦労を――」

「…苦労? ハンパに恵まれてる人たちって、すぐそう言いますね。苦労、苦労って」

「テメェ、ケンカ売ってんだったら――」

「…じゃあ僕が試合の決め手になる拠点を落とせ、なんて言われる機会があると思いますか?」

「――!」

「…必死で地形効果を無効にしても、僕が素手で落とせる相手なんていやしない。

 …ああ、素手のG・ラットさんかスプライトさんくらいですか(笑)。

 …アイテム援護もない拠点武器を持った僕が攻め込める機会なんて…」

 

「あっちはえらく盛り上がってやがるな」

「フレーバーテキストに色々書き込めるエリート様の悩みってヤツだろうな。

 俺なんざ、”彼らは戦いに必要不可欠な存在である”なんておだてられて調子に乗ってる内に、

 世紀末救世主に爆発させられてそうなモヒカンのお陰であっさりリストラされちまったし…」

「あの連中には”特記事項なし”の一言で干物以下の扱いを受ける年寄りの悩みなんぞ、

 一生分からんのじゃろうな…」

「道理が分からん連中には、好きに言わせておけばいいのさ。

 こっちにも少しパラメーターが高いとか即死持ちとかでいい気になってる連中はいるけどな、

 俺は何回戦ってもへこたれねぇし、どんな仕事先だろうが決して気を抜いたりはしねえよ!」

「さっすが! 長年モデル業で活躍してた人は言うことが違うねぇ!」

「世辞なんざいらねぇよ。…オヤジ、もう一杯だ!」

 

この酒場には色々な過去を持つ客が訪れる。

”NEW”の表示と多彩な可能性を示唆する能力に過剰な期待を抱き、

そして絶望を味わったセプターに見捨てられた者、

あるいは無難さ故、貪欲に勝利を求めるセプターから切り捨てたられた者。

混ぜ合わせてしまえば醜い泥と大差ないが、元々は独自の鮮やかさを持つ絵の具のように、

それぞれの魅力を持ちながらも日の目を見ることのない者たち…。

 

……。

「おい、オヤジ!」

「あ、失礼しました。絞りたてミルクのストレートですね」

 

私が戦場に立つことを諦めてから、どれだけの時間が経っただろうか。

私にも夢はあった。

戦場の花形…とまでは言わないまでも、私がいれば役に立つ、そう言われてみたかった。

同輩の学者が休むことなく働いているうち、

目に見えて痩せ細っていく様を目の当たりにするまでは。

「求められる限りは働き続けるよ。…求められなくなったら? そんな事を考える暇はないね」

 

新作が出て以来、この酒場で腐っていた頃からは信じられない程の出世を遂げた連中は多い。

新作へ出場できない間にマメな根回しを続けた結果を

STアップや無効化という成果に繋いだ奴もいる。

中には親会社が新規事業へ手を出した際の失敗をネタにして、

自身の地位を上げたと噂される奴すらいる。

 

かく言う私は…未だ場末の酒場のマスターでしかない。

そして、それだけでいい。

どのセプターからも声をかけられることもなく、

戦い疲れた者たちへ一時の気晴らしを提供するだけだ。

 

たまに酒場の常連から冗談めかした誘いを受けることはある。

「お前にだって特技はある、それを活かしてみる気は無いか」と。

おいおい、勘弁してくれ。

新作になって人族への強打をもらったとはいえ、

HP40/ST30の無属性なロートルに何をしろって言うんだ?

 

カウンターの中から戦い続ける彼らを日々労い、からかいながら、見つめ続ける。

今の私には、それだけでいい。