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終わらない砂時計

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2010-04-01

バブラシュカ昔話 『マスマインの伝説』

02:19

私が、カルドセプトをはじめたばかりの頃
私の兄は出勤前に、決まってカルドをやっていました。

何をしているのかと尋ねれば、返ってきた答えは

「朝マイン

聞けば、なんでもそれが社会人のたしなみ、とのこと。なんじゃそら。

ビジネス前の笑い分摂取は云々とか言い出したので適当に聞き流していたところ、急に呆れ顔で
「お前、まさか『あの話』を知らんのか?」
と言って、彼の中では“メジャーな”逸話、とやらを得意げに語って聞かせはじめました。


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むかしむかし、カード比べが盛んな王国の片隅に、ロワンという名の 若いセプターが住んでおりました。

ロワンは大のいたずら好き。
毎日、街のどこかに<マイン>をしかけては だれかがうっかり踏みつけて爆発させるしゅんかんを 今か今かと待つのです。

あるときは、辻道の真ん中に。
またあるときは、人通りの多い街角に。
ときには、王様の住むおの中やにまで!

<マイン>がはじけたポンッという音を聞きつけるや否や まんぞくそうな笑みをうかべてねぐらに戻る
この困り者のセプターを、街のだれもが 持て余しておりました。

「よのなかのセプターは いっしょうけんめいカード集めをして 対戦の研究をしてるってのに どうして遊んでばっかりいるんだろうねぇ」

「あいつも、いざとなったら<マイン>なんざ捨てて<マナ>の一枚でもブックに挿すようになるだろうさ。
 いつまでもネタカードばかりを使ってはいないだろうよ」

そんなある日のこと。
王国に、黒い衣をまとった 一人のセプターがやってきました。

「私は神に最も近いセプター
 最高のブック、最強のカードを手にした今 この世にもはや敵はいない。
 我こそは というセプターカードを賭けて勝負せよ!
 その勇気、その矜持、まとめて吹き飛ばしてやろう」

ちょうはつを受けたセプターたちは かんかんになって怒りました。
「我らが何十年もかけて集めたカード
 研究して組み上げたブック
 お前のようなものに負けるはずがない。
 その自信、逆に叩き折ってくれる!」

カードとプライドを賭けた対戦がはじまりました。

街のセプターたちは、小さくて頑丈なクリーチャー土地を得るほど力を増す特殊な能力をもったクリーチャーをたくさん喚びだして マップをつぎつぎに埋めていきます。
「さきほどまでの威勢はどうしたのだ?」
笑う対戦相手に、黒のセプターは 落ち着いて答えました。「嵐が来れば、みな消える」

びゅおぅおぅ。

マップに、荒々しい風が吹きました。

街のセプターたちのクリーチャーは、次々と嵐に吹き飛ばされてゆきます。
「あいつだ、あいつのカードを壊すんだ!」
慌てたセプターたちがシャッターを引いても後の祭り。
黒のセプターは<バリアー>のカードを開いて、いっさいの妨害を受け付けなくなっていました。

「ははははは! 我がカードの前には どんなクリーチャー、どんなスペルも無力になるのだ!」

街のセプターたちは敗れ去り、王国は嵐の黒雲に覆われました。


今日も今日とて、いたずらロワン。
えものを求めて街に出てきたはいいものの、その様子にびっくりぎょうてん。
嵐を恐れた人々は、みぃんな家のなかに閉じこもり 厚い雲の下で薄暗くなった通りには人っ子一人いないではありませんか。

「これ、ロワン! お前も早く隠れなさい、黒のセプターに見つからないように。」

「嵐が吹いたら、何もかも吹き飛ばされてしまうのだ。もう、この王国はおしまいだ」

人々が家の戸の隙間から、必死にロワンに呼びかけます。

しかしロワン、逆にぶるぶると拳をふるわせると 黒雲の中心に向かって駆け出してゆきました。

「こんな嵐、おれの<マイン>で吹き飛ばしてやる!」

人々は その小さな背中を見て どうか命だけは助かるようにと 神さまに祈らずにはおれませんでした。


稲光のする ぶきみな荒野の真ん中で 二人のセプターは出会いました。

「小僧、おれのブックに敗れにきたか」

不敵に笑う黒のセプターの前で、ロワンは はっきりこう言いました。

「ううん、この退屈な嵐を 終らせに来たんだ」

黒のセプターは すさまじい笑顔を浮かべると <テンペスト>のカードを引き抜きました。

対戦の合図です。

ロワンはクリーチャー召喚して 黒のセプターを包囲しようとしましたが

相手の放つ<テンペスト>の前に みな消し飛ばされてゆきます。

シャッタードレインマジックを引いて、黒のセプター攻撃しようとしても

固い<バリアー>にはばまれて 傷一つつけられません。

黒のセプターはゆうゆうと 魔力を肥やしてゆきました。

「ははははは! どうだ、生意気な小僧! 俺の嵐で消し去れないものは無く、俺のバリアーを崩せるものも無い!

 これを超えるカード、戦略など どこにあるというのだ?

 最強の矛と、最強の盾。合理的な戦略と、無駄のない戦術。

 この前に、貴様はなす術も無く敗北するのだ!」

「お前は、太陽を奪った。」

ロワンは突然、そう呟きました。

「互いの支援を忘れて突っ込まされたマイコロンヘッジホッグに串刺しになったときの 切ない泣き声を聞いたことがあるか?

 主人の号令に勇ましく吠え ジオファーグに噛み付いたヘルハウンドが 弱打で仕留め切れずに戻ってくる時の垂れ下がった尻尾を

 隣接地の地属性LV5ウルフを物欲しげに見つめているモスマンの瞳を、ウルフの勝ち誇った表情を

 マンドラゴラを持ち歩くセプターが横を通るたび 視線をさっと逸らすG・イールの群れを

 お前は見たことがあるのか?」

「何が言いたい?」

ぼろぼろになったロワンを見下して 黒のセプターはたずねます。


「みんなお日様の下でバカやって、だんだん強くなってった。

 ブックに入ったばかりの新米クリーチャーが、主人のヘボい移動侵略でずっこけて、古参クリーチャーに顔を覚えてもらえたり。

 王国に着いたばかりのセプターを歓迎しようと、ネタ満載のブックを持って対戦に入ったら、仲間とネタが被って苦笑いしたり。

 ずっとずっと負け続けて、どうしても勝てなくって、みんなに笑顔でさよならをした対戦場の片隅にひとり残って、絵柄のにじむカードを握りしめてブック編集を続けたり。

 泣いて、笑って、ちょっとずつ上手くなっていった。

 涙も笑顔も根こそぎにしてしまった雲の下で唱える“最強”なんて、つまらない。

 だから、お前なんて吹き飛ばしてやるんだ。

 魔力を吸えば吸うほど、火力が無限に増えてゆく――

 嵐に吹き飛ばされず、バリアーをも打ち負かす、最高にバカなこのカードで!」


「血迷ったか。そのようなカード、あろうはずが……」

黒のセプターがロワンへ一歩踏み出した、その瞬間、

カチリ、という不思議な音があたりに響きました。


「地の底から 天へ昇る雷を、見たことあるかい?」

ロワンがニヤリと笑って、言いました。

「太陽を返してもらうよ」


 

  ちゅどぉぉん

 

嵐の唸りをかき消し、轟いた爆発音に、街の人々は肝を潰して 戸口から 窓の隙間から そっと外の様子を伺いました。

すると、どうでしょう。

大地からまっすぐ天に立ち上る 大きな大きな火柱が

ぶ厚い雲を貫いて、バリアーを張ったままの黒のセプターを 高々と空へ打ち上げていたのです。

黒雲は またたく間に力をうしない

火柱が貫いた雲の裂け目は みるみるうちに大きくなって

明るく 澄んだ青空が ついに戻ってきたのでした。


街をおびやかした黒のセプターと共に

あの日 嵐の中へ飛び出した困り者のセプター

ついに王国に戻ってはきませんでした。

だけれど人々は知っています。

絶望を打ち砕いたカードが何であるかを。

そして思い出したのです。

自分たちが はじめてカードを開いたときの あのワクワクとした感動を。

それから、王国ではあるカードが流行りました。

今日も街のどこかで にぎやかな音がします。

だれかのバカがはじけるたびに さんざめく笑いの波。

この国を訪れた とある旅のセプターは、この光景に驚きあきれて こう言いました。

「まるで、『マスマイン』のカードを開いたみたいだぜ」



カルドセプトをめぐる闘いの末

ひとりのセプターが覇者となった時、新しい宇宙が闢けました。

その名を、『マインジア』。

アーサークという青年が神となり、統治するその宇宙は

 地のノレ=スキン

 風のチェレスティーナ

 火のドラン・ク・プルム

 水のラピスリリー

という四柱神の元に大いに栄え、

その創造主たるアーサーク神こそ、あのロワンではなかろうか

と噂するものもあったといいます。

ただ、街の人々が これは確かにあったことだ と今でも言い張るのは

消え行く嵐の中 笑いながら 地雷原を駆け抜けていった小さなセプターの後姿が掲げる

一枚のスペルカード発動した瞬間 

胸の奥で埃を被っていた古い本が 雲間から顔を出し始めた太陽の光のように 颯爽と開けてゆく

気持ちの良い感動があったということです。

                                   おしまい


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当時、高校生だった私は「どうせ作り話でしょ」と話半分に聞いていたものです。

ですが、はじめてのオフ対戦会で私が使ったブックは、焼き対策。
イビルブラストなどの単体焼きなどを絡めた変則的なテンペブックがきても対抗できる、“ファンタズム付きバトルギア”作成を主軸としたものでした。

今にして思えば、あのとき兄から聞かせられた昔話から、無意識にテンペブックに対する警戒心を煽られていたのでしょう。

(※当時のカルドセプト版では、テンペスト効果は全てのクリーチャーに20ダメージ、だった。DS版のような対象ST要素はない。)

偶然にも、対戦でテンペブックとかちあたり。
わたしの狙い通り、ファンタズム付きバトルギアは嵐吹きすさぶマップで無敵の強さを誇りました。
が、バトルギア以外の全てのクリーチャーを焼かれて負けました。てへ☆

あのとき、なぜファンタズムではなくマインを入れていなかったかと思うと、今でも悔やまれます。

ゲスト



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