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ぼくらの35ラウンド戦争 ~ヨシのカルドセプトに関する雑記~

2011-12-26

カルドセプトにおける戦略的思考について

| 00:23

 カルドセプトでは、いかにして相手セプターよりも自分が有利に立つかを考え続けるゲームです。そのためには、自分のプレイングだけではなく、相手のプレイングにも気を配らなければなりません。自分のみならず、相手セプターの行動と思惑が利害を生み出すこういった環境を戦略的環境と呼びます。また、その環境の中でゲームを行い、合理的に判断を下すため意思決定することを戦略的思考と呼びます。


 複数の人数でゲームを行う以上、勝利を目指すには戦略的思考が必要です。今回は戦略的思考についてまとめていこうと思います。


1.カルドセプトにおける戦略的思考の原則

 自分の戦略を合理的に決定するには、いくつかのプロセスが必要です。取り得る戦略にはどういったものがあるのかを考え、相手の戦略を予想・分析・操作して、相手の戦略に対して自分の戦略が生み出す利益を考察し、自分の戦略を決定する。詳細を挙げればきりが無いでしょう。


 ここで重要なのは、自分の戦略の価値は、それ単体では評価できず、相手の戦略行動にも左右されると言うことです。


 例えば、フレイムウィビルドロースペルをたくさん採用したブックは、防衛力の弱いブックに対しては効果を発揮しますが、テンペストを採用したブックには手も足も出ないでしょう。相手の戦略を予想・分析・操作することは、試合前も試合中も非常に重要となります。


 相手も勝ちを目指すセプターであれば、きっと最善を尽くしてくるでしょう。そんな渾身の戦略をぶつけられても、有利に立ち回れる自分の戦略を検討する必要があります。


本項のまとめ
  1. 自分の利益は自分の行動だけでは無く他人の行動に左右される



 戦略を決定するには、相手セプターの戦略についても知る必要があることを論じました。では具体的には相手セプターに対してどのような観察を行い、相手の戦略を予想・分析・操作をすれば良いのでしょうか。


 以下では、主に試合中にセプターの行動に影響を与える「インセンティブ」と「コミットメント」について論じます。その結果から、試合中に気をつけるべきこと、試合前のブック構築段階で気をつけるべきことなどを考察していくのが目的です。


2.インセンティブ

2-1.インセンティブとは

 インセンティブは「動機付け」などと訳されます。あるセプターから、特定の行動を引き出すための好子(行動の主体となるセプターにとって好ましい事柄)が与えられる仕組みと考えれば良いでしょう。どんな行動も意味なく行われることは無く、理由、すなわちインセンティブがあるからこそ実行されるのです。


 例えば、スチームギア召喚して相手のゴブリン侵略できるのであれば、多くのセプターがそうするでしょう。侵略という行動は、自分の領地が増える、相手の領地が減るという好子がインセンティブとなって、引き出されているのです。


 インセンティブによって行動が引き出されているということは、インセンティブを操作すれば様々な行動を操作できるということです。


 たとえば、大量の手持ち魔力を得て総魔力を伸ばせるという好子がインセンティブになっていて、多くのセプターランドトランスするチャンスを狙います。しかしドレインマジックを保持しておくと相手セプターには、ランドトランスをしないという行動に付随する「大量の魔力を奪われることを避ける」という好子が生まれます。これがより強いインセンティブになり、ランドトランスを抑制することができます。


 自分の行動が、相手の行動にどのようにインセンティブを与えるのかを考える必要があります。


2-2.強いインセンティブと弱いインセンティブ

 レベル5の領地踏んでしまった場合、高額の通行料を支払わなければなりません。逆に通り抜けられれば通行料を支払わなくて済みます。この「無料で通り抜ける」という好子は、レベル5の領地踏むことを避けるために移動スペルを使うという行動を引き出していると言えます。では、この領地フォッグがかかっていたらどうでしょう。半額とはいえ通行料を支払うのは避けたいところですが、先の例よりは行動を左右する力は弱いはずです。


 このように、インセンティブには強弱があります。通行量の例のように利益や損失の多寡はもちろんですが、他にも様々な事柄がインセンティブの強弱に影響します。ここでは「タイミング」と「行動と好子の関係性」の2点について論じてみます。


  • 2-2-1.好子が発生するタイミング

 まず1つ目は、好子が与えられるタイミングです。


 犬のしつけをする際には、好ましい行動をした場合はすぐに褒めるべきだと言われています。これは、行動に対して好子をすぐさま与えることによって、行動に対してインセンティブを働かせているのです。褒められるのは誰しも嬉しいものですが、この好子を行動の直後に与えらることによって、犬はその行動を頻繁に行うようになります。この好子を与えるタイミングが重要で、行動の直後であれば直後であるほど、インセンティブは強くなります。


 犬に限らず人間もこの原則は同じです。人間に対して行動療法を行う場合も、原則として好子を60秒以内に与えなければインセンティブを適切に働かせることはできないと言われています。つまり、人間はすぐにご褒美をもらえないと行動をしたがらないのです。犬も人間も現金ですね。


 カルドセプトに置き換えて考えてみましょう。すぐに効果が現れる行動には、どういったものがあるでしょうか。


 単体瞬間スペルに関しては、おおむね「すぐにご褒美をもらえる行動」に分類できます。マナを使えば、すぐさま魔力を得ることができます。ドレインマジックを使えば、すぐさま魔力を奪うことができます。侵略もすぐに「領地の確保」というご褒美がもらえます。このようにすぐ効果が現れる行動には強いインセンティブが働きます。初心者が短絡的に単体瞬間スペルを使用したり、侵略をしたりするのには、こうしたインセンティブが働いていることも原因の一つと考えられます。


 逆に、すぐには効果が出にくい行動というものにはどういったものがあるでしょうか。


 護符マップにおける協調戦略などは、その最たるものです。序盤に同色の相手の領地侵略せずに護符を協調戦略を敷いても、すぐには総魔力に影響しません。護符価値の高騰などの協調戦略特有の効果が出るのは、ずっと後です。とても直後とは言えません。


 スペル保持もその一例です。ドレインマジックをすぐに使用すればすぐに魔力が得られますが、保持をすることによって相手の行動を何ラウンドも制限することができます。短絡的にドレインマジックを使用するより効果が大きい場合が多いでしょう。しかし、その効果が現れるのは今ではなく数ラウンド後です。これもインセンティブは弱いと言えます。


 目先の利益にとらわれがちな我々人間にとっては、協調のメリットを意識したり、ドレインマジックの保持効果について適切な評価をすることは、比較的難しいことだと言えるでしょう。


  • 2-2-2.行動と好子の関係性

 2つめが行動と好子の関係性です。好子は、行動にインセンティブを与えます。ただし、その主体となるセプターが、行動と好子の間に関係性を見いだせなければ意味がありません。


 以前私は「二心ではヘイストと比べホーリーワード6は有用だ」という理論に懐疑的でした。任意の土地に停止できるという好子と、HW6を採用するという行動の間に、関連性が見いだせなかったのです。そのため「二心用のブックHW6を採用する」という行動をせず、ヘイストを使用していました。HW6を採用するインセンティブが低かったのです。


 その後確率などを計算することにより、任意の土地に停止できるという好子と、HW6を採用するという行動の間に関連があると気付きました。それ以来はHW6を自然に採用するようになりました。関係性が意識できたことによって、HW6を採用するインセンティブが増したと言えます。


 このように、行動に影響を与えるのは、実際に行動と好子の関係性が強いかどうかよりも、主体となるセプターがその関係性をどう評価するかによって行動の頻度は変化します。そのため、インセンティブは対象セプターの知識や認識に左右されます。


 護符ブックと対戦する際には「護符ブックに対しては、戦闘を控えて早めにレベルアップを心がけると勝ちやすい」という定石を知らなければ、護符ブック対策行動を行うことは難しいでしょう。当たり前ですが、知らないことに関しては、行動との関係性を見いだすことなどできないのです。


 また、関係性を意識しやすい好子であることも重要です。マナを使って250Gを得たとすると、その250Gは紛れもなく「マナを使用する」という行動によってもたらされたものです。好子と行動の関係性は明確です。


 ではドレインマジックを保持して相手の行動を制限した場合はどうでしょうか? そもそも「相手の行動を制限した」とは具体的にどういうことなのでしょうか。無理矢理レベルアップさせたこと? それとも、ランドトランスを抑制したことでしょうか? それらの効果は多岐に渡るため、全てを定量化して評価することは難しいでしょう。行動の結果、得られる好子がマナの例と比べて曖昧なため、ドレインマジックを保持するという行動のインセンティブは弱くなりがちだと言えます。


 狙った効果が、本当にドレインマジックの保持によってもたらされたのかも、考慮する必要があります。相手セプターランドトランスをしなかったのは、あなたがドレインマジックを保持したからではなく、護符価値をコントロールしたかったからなのかもしれません。ある行動の結果得られると思っている好子が、本当にその行動に起因して得られているのかを確かめにくいことも、インセンティブを弱めています。


2-3.インセンティブをコントロールする

 全ての行動は、インセンティブの強弱に基づいて行われます。たとえ理屈では何となくわかっていても、いざ試合となったときにはどんなセプターもインセンティブから逃れることはできません。それらを踏まえ、インセンティブとどうつきあっていくかを考えてみましょう。


 自分の行動を最適化するためには、インセンティブを自分でコントロールするべきです。勝利につながるプレイングを引き出すインセンティブを強め、悪手を引き出すインセンティブを弱める必要があります。


 まずは望ましいと思われる行動に付随する好子を、徹底的に挙げてみるべきです。すなわち、検討や考察を重ねるべきなのです。そのプレイングによって、どのような効果が得られるのかがわからなければ、効果的な運用はできません。試合では、好子の関係性を意識できている行動しか実行できないのです。


 「ドレインマジックを保持する」というプレイングを例に取ってみます。この場合、好子としては「天然ランドトランスを抑制する」「現金輸送を抑制する」などが挙げられるでしょう。プレイングに付随するこれらの好子が多ければ多いほど、大きければ大きいほど、そのプレイングには価値があると判断することができます。その場合は、好子を明確に意識して、その行動をうまく自分のものにする必要があります。


 行動を強化する際には、先に論じたタイミング行動と好子の関係性が重要になってきます。考察によって行動と好子の関係性は明確になるので、それは問題ないでしょう。


 ではタイミングに関してはどうすれば良いでしょうか。行動を取ったあと、好子がすぐに得られないと行動は強化できません。そこでルールによる制御が有効です(ここでいうルールとはカルドセプトレギュレーションルールとは違うものです)。ルールによる制御というのは、端的に言えば「ルールが、ルールの中に示された、行動を制御すること」です。


 例えば仕事について。想像するに、仕事が好きでしょうが無いという人はごく稀で、セプターなら誰でも仕事なんて放り出して家でカルドセプトをやりたいと考えるでしょうが、多くのセプターはきちんと仕事をしています。なぜ仕事という行動が維持されているのでしょうか。これは「仕事をすると、給料日に給料がもらえる」というルールが、行動を制御しているのです。仕事をすればすぐに給料という好子をもらえる訳ではありませんが、ルールが仕事をすれば給料という好子がもらえることを示していいるため、仕事という行動を制御しています。


 ドレインマジックの例で言えば「このドレインマジックを保持したことによって、保持期間中はずっと天然トランスができなくなる」というルールが考えられます。このルールを意識することによって、直後に好子が得られない場合でも、行動を起こせるようになります。


 好子の有無と同時に、行動に付随する嫌子(行動の主体となるセプターにとって好ましくない事柄)も検討してみるべきでしょう。ドレインマジック保持の例で言えば「カードを1枚保持していることによって手札が圧迫される」などが嫌子に当たるでしょう。検討の結果、嫌子があまりにも多く挙がるのであれば、そもそもそのプレイングが本当に望ましいものなのかを再検討するべきです。


本項のまとめ
  1. インセンティブとはあるセプターから特定の行動を引き出すための好子が与えられる仕組みである
  2. 行動と好子の関係性は明確であるほどインセンティブに影響する
  3. 好子は行動の直後に現れるとインセンティブに影響する


3.コミットメント

3-1.コミットメント・コミットとは

 コミットとは将来自分が取る行動をあらかじめ約束することを、コミットメントはコミットする内容やコミットを行う行為を指します。あらかじめ行動を宣言し、自分を縛ることで、どのような効果が生まれるのでしょうか。


 例えば、歩道を歩いていたときに、正面からも人が歩いて来たとします。このままでは正面衝突してしまいそうです。その際にあらかじめ自分が右側を歩いておく、すなわち「今から私は歩道の右側を通りますよ」とコミットすることにより、相手は左側を通ってくれることでしょう。このように、自分がコミットした結果、相手が取ると予測される行動が、自分にとっての望ましい行動であるのならば、コミットメントは有効な手段です。


 もちろん、戦略的環境においては、必ずしもコミットメントすることが有利に働くわけではありません。けんかをする時に、正直に「右ストレートでぶっ飛ばす」と手の内を宣言してからけんかに臨むのは、戦略的思考の見地からみれば有効とは言えないでしょう。


3-2.カルドセプトにおけるコミットメント

 カルドセプトにおけるコミットメントの手段は様々です。


 例えば「私はあなたの土地侵略しません」とコミットして、協調戦略を取りたい場合はどうすれば良いでしょうか。フュージョンを捨てたり、アイコンチャットで協調の意を示したりすることなどが挙げられます。


 また、相手からコミットメントを引き出す事もできます。例えば、以下のように水属性領地に隣接して自分のデコイ、相手のパイロマンサーと並んでいるとします。


[自デコイ][敵パイロ]


 相手は戦闘する気満々で「領地指示機会が得られたら、デコイ移動侵略する」とコミットしています。それに対して、以下のようにスチームギア配置します。


[自ギア][自デコイ][敵パイロ]


 そして「パイロマンサーデコイ移動侵略したら、スチームギアパイロマンサー移動侵略する」とコミットします。そうすることによって、相手は「パイロマンサー移動侵略し、自分の領地一つと相手の領地一つを減らす」または「移動侵略せず土地をお互い保持する」という選択をすることになります。大概の場合は、お互いの損を避けるために「移動侵略しない」というコミットを引きだせるでしょう。


3-3.カルドセプトにおけるコミットメントの効果は弱い

 コミットメントにも効果が高いものと低いものがあることは、本項の最初で述べました。


 実は、本項はコミットメントの有用性を説くことを目的としていません。カルドセプトにおいてコミットメントは非常に弱い効果しか発揮できないということを論じたいと思っています。理由は大きく分けて「伝達手段が無い」「信頼できない」「制限できない」の3つです。


 まず1つ目の「伝達手段が無い」。これは単純に意思疎通がしにくい環境下であることが挙げられます。


 コミットをするには、自分の意図を相手に伝えなければなりませんが、その意思疎通がしにくい環境ができています。現状ではボイスチャットなどで会話しながら試合できるのは稀で、大会でも会話は推奨されていないことがほとんどです。これでは、そもそもコミットの内容を相手に伝えることができません。


 ドレインマジックを捨てるなどして「ドレインマジックを打たない」ということならコミットできるでしょうが「ドレインマジックを捨てるからラントラしてください。協調して護符の価値をあげてくれれば、私はあなたを侵略しません」というような複雑な意図を相手に正確に伝えることはほぼ不可能です。


 2つ目の「信頼できない」というのは、コミットメントを信用させたり信用したりするのが難しいという事です。


 長期的な信頼関係があってこそ、コミットメントは効果を発揮します。信頼できないために、そもそもコミットしたことを本当に守るのかどうかを疑われてしまっては、コミットメントの意味をなさないのです。同率1位が単独1位と同じ価値を持つ対戦で「JUNCTIONに向かわず、スペルクリーチャーも使わず、周りを延々回って全員で1位になろう」というみんなが幸せになれる合理的な戦術が成立しないのは、ひとえに相手を信頼できないからでしょう。


 そして3つめ。「制限できない」ということが、カルドセプトのコミットメントの効能を弱めている一番の原因であると考えます。これは、信頼できない理由にもつながりますが、相手ではなく自分の行動を制限できないことが原因です。


 例えば、協調戦略を維持したい場合に、以下のような配置になっているとします。


[敵デコイ][自パイロ]


 自分は協調戦略を取って護符価値を伸ばしたいので、デコイ移動侵略するつもりは全くありません。しかし、移動侵略は『できてしまう』のです。この状態で「一緒に協調しましょう! なかよし!」と言っても、相手としてはいつ裏切られるのかとはらはらしてしまうでしょう。とても協調どころの話ではありません。


 我々の生活の中には、コミットメントの信頼度を維持するための仕組みが随所に取り込まれています。例えば「交通ルールを守る」というコミットをさせるために、罰則金があったり、違反点数方式があったりするわけです。そういう背景が「コミットメントは守られるだろう」という信頼を生み、日本の交通は一定の水準を保っています。


 これが罰則金も違反点数も無く「各々の良識に任せます」という方式であったら、とても怖くて外なんか出歩けないでしょう。カルドセプトにおけるコミットメントもこれと同様で、コミットした内容を反故しても、なんの罰則も無いのです。相手を信頼するのは難しい環境であると言えます。そういうこの状態から、より強く移動侵略しないことをコミットしたいのであれば、わざわざパイロマンサードレインローパーに変えたり、デコイにピースをかけてあげたりしなくてはいけません。何ら手順の進行に寄与しないプレイングを強いられる訳です。


 戦略的思考の原則の一つとして「戦略的関係にある相手は、最善の手を打ってくるものと考え、その上で自分の利益となる行動をするべき」というものがあります。相手も必ず最善手、すなわちこの例だと協調戦略を採用するものと考えるべきというものです。そう考えると、相手に気を遣ってパイロマンサーを別のクリーチャーに変えたりするのは利にかなっていないかもしれません。「ここでお互いに消耗し合ってもしょうが無い。パイロマンサー侵略してくるメリットは薄いから、このまま伸ばそう」と考えるに違いない、と判断するのが戦略的思考としてはスマートです。


 しかし、相手も必ずその最善手に思い至ると仮定するのは、実際に協調を採用する人間の少なさを見てみれば、机上の空論かもしれません。伝達手段が無く、信頼関係を気付くのも難しく、自らの行動を制限してコミットの信頼性の強化できない環境下では、コミットメントの効果は弱いと言わざるを得ないでしょう。


本項のまとめ
  1. コミットとは将来自分が取る行動をあらかじめ約束すること
  2. コミットメントはコミットする内容やコミットを行う行為のこと
  3. コミットメントは信頼性がある相手には効果が高い
  4. コミットメントは自分の行動に制限をかけると効果が高い
  5. カルドセプトにおいてコミットメントは基本的に効果が低い